通関士試験を終えて

こんぴー さん(33歳男性 会社員 2019年度合格 受験回数2回)

この度53回通関士試験に2度目の挑戦で合格することが出来ました。はじめに、最後まで応援してくださった、みこさんに感謝申し上げます。本当にありがとうございました。二年間時に厳しく、時に励まして頂いたお陰です。これから通関士試験にチャレンジされる方に向けて、少しでも参考になればと思い、体験記を書かせていただきました。二年分を書くと量が膨大になりますので、主に下記に該当する対象者向けに書かせて頂きました。

【主な対象者】

・複数回受験(リベンジ組)

・あと数点で合格(特に通関実務が数点足りずに不合格組)

・育児と並行(子供が0歳から1歳ぐらいで、がっつり育児に関わっていらっしゃる方)

【プロフィール】

52回点数(不合格); 通関業法40/45(88%) 関税法等51/60(85%) 通関実務19/45(42%)

53回点数(合格); 通関業法38/45(84%) 関税法等41/60(68%) 通関実務33/45(73%)

一年目の学習形態;フォーサイト通信教育+みこ会 二年目の学習形態;独学+みこ会

1)一年目の不合格 ~妻の妊娠、出産を経て~

2018年10月12日、第52回通関士試験本番二日前に私は分娩室にいました。長男が試験2日前に産まれました。無事に産まれてくれましたので当然嬉しいのですが、2日後の試験のことを考えると不安もありました。2016年12月から学習をはじめ合格圏内には達していたと自分では思っていましたので、何とかなるか、と試験に挑みました。が結果不合格。

  52回試験結果

  通関業法 40/45

  関税法  51/60

  通関実務 20/45

 通関実務が3点足りませんでした。合格ラインが50%まで下がっておりチャンスだったのですが、結果不合格。非常に残念でした。本当に悔しく、しばらくは何も手が付きませんでした。みこさんにも当然連絡をしたのですが、みこさんからは「絶対に合格するまで辞めさせませんよ!」という激励のお言葉を頂き、エンジンがかかりました。2019年2月頃の話です。

2 )再び勉強開始 ~思うように時間が作れない~

【2019年2月頃】 

勉強を再開したのですが、子供が生まれたことにより学習可能時間が非常に減ってしまいました。

ざっくりと学習時間を記載しましたが、明らかに減りました。休日まとまった学習時間が取れないことが痛手でした。子供が成長するに連れ、土日どちらも勉強出来ず勉強時間0分の時もありました。1年目と同じようにやっていても環境が全く違うため、だめだと思い作戦を練り直しました。下記使用したテキストや、問題集、取り組み方等を記載していきます。育児をやりながらの学習は本当に本当に大変です、なのでポイントはいかに「隙間時間」を有効活用できるか、です!!

3 )学習方法の再考、使用教材・学習方法の紹介

メインテキスト;通関士教科書 翔泳社(ヒューマンアカデミー)通関士 完全攻略ガイド

常に持ち歩いておりました。表現の仕方は易しく、わかりやすく、かつ、初心者が抱きそうな疑問とそれに対する答えがページの端に書いてあったりと、大変重宝しました。歩いている時なども「あれ?なんやったかな」と思った瞬間にテキストを開いて確認するようにしていました。それを繰り返すことにより、段々とテキストが頭の中に浮かぶようになり、テキストと全く同じ事が紙にかけたりするようになってきます。こうなればもらったもの同然やと思います!

【通関業法の学習方法】

使用教材

テキスト→フォーサイトテキスト(一年目に使用していたものですが途中からは使わなくなりました)

※通関業法についてはフォーサイトのテキストを使用していました。

問題集→通関士試験問題・解説集 合格基準分野別・出題頻度順 2019年度版/関税協会

通関業法については初回受験時40点を取っていたため新しく知識を入れることはせず、試験まで忘れないように繰り返し答練を行いました。学習時間ですが、毎週水曜日の通勤時間、帰宅時間のみの答練を行いました。問題集は分野別になっておりましたので、通関業法の部分をコピーして電車の中で繰り返し解きました。それだけしかしていません。一年目も約1週間で大まかな知識を詰め込み、あとは答練を繰り返しました。出題されるポイントは毎年ほぼ同じですので、難しいことはないと思います。テキストを完璧に覚えてから問題へ、ではなくある程度で問題にとりかかった方が私はよいと思います。

【関税法等の学習方法】

関税法、関税定率法、関税暫定措置法のみを学習しました。ナックス法、外為法、は全くのノータッチです。テキストも読んでいません。これは一年目もそうでした。二教科目は範囲が膨大ですし、ナックス法等は点数にも結び付きにくいので思いきって捨てました。通関業法同様に問題集の関税法部分をコピーして電車の中で〇×を実際に問題番号の横に書きながら答練を行いました。その際に問題の「正しいものを選びなさい」「違うものを選びなさい」の部分にも線を引くことを心掛けました。

余談ですがテキストは紙版、問題集については電子版の方が利便性は良いと思います。問題集に直接〇や×を書き込まないですよね。電子版だと印刷もしやすく、本を持ち歩くよりも軽いので答練をする場所を選びません。私はどちらも本を購入していましたので、コピーを取るのも一苦労でした。時間もかかるし、通関士の問題集は分厚いのでうまくコピーもできないときもあり、、絶対に問題集に関しては電子書籍をおすすめします。

【通関実務の学習方法】

二年目に最も力を入れた教科でした。恐らく三教科目で悔しい思いをする方が多くいらっしゃると思いますので、

分野に分けて記載したいと思います。

申告書問題について (学習時間帯;平日休憩時間 60分 輸出/輸入申告書のいずれかを一日1題)

とにかく苦手で大嫌いでした。自信をもって番号を選べないことも多々ありました。類注が長くなると今でも拒否反応が出て、思考停止します。よって、二年目は類注に慣れる所から始めました。一年目は問題集を解いていても答えがあっていればそれで終了としており、中身を深く見に行くことはしていませんでした。二年目の学習を再開した初期の頃は、時間無制限で申告書を解き、ゆっくり類注を読んだり、インボイスの英語と関税率表を見比べたりと、申告書問題、関税率表にとにかく慣れることからやり直しました。その中で疑問が湧いてきます。ネットや税関のHPで調べたりするのですが、それでもわからないところはみこさんにLINEしていました。みこさんに質問するときも「これがわかりません」みたいな質問の仕方ではなく、「この貨物は類注のここにこうやって書いてあるので、①だと思いますが、解答は違っています。何が違うのでしょうか」のように、まずは類注に基づいた自分の考えをもって質問することを心掛けていました。みこさんは的確に、かつ迅速に解答してくださるので、疑問が即時に解決され、学習が非常にスムーズに進みました。通関士試験の学習の中で一番時間を費やした分野が申告書です。最後の最後まで不安でしたし、試験1週間前で何度も見てきた問題ですが、間違うことも多々ありました。53回本試験については下記簡単に記載します。

  • 輸出申告書 2/5点

難しく感じましたので、試験中に満点は無理と判断、0点じゃなければ良しと割り切れたことが良かったのだと思います。

  • 輸入申告書 15/15点

正直満点とれるとは思っていませんでしたが、答練中に問題の条件や類注が多いものにも沢山触れておりましたので、焦らず解答できたことを覚えています。

(申告書問題を振り返って)

非常に苦手だった申告書問題が合計17/20点でした。勉強再開時にゆっくり類注などに触れたことが良かったと思います。少しでも疑問があったところは流さずに、みこさんに質問したり、英単語の意味を調べたり、英語で書かれている貨物を想像し、どんなものかわからないときはネットで画像検索したり、ととにかく能動的に問題の本質を理解しようと行動したのが良かったのだと思います。焦らないように日ごろより輸出申告書20分、輸出申告書40分と時間を区切って答練していたことも良かったのだと思います。本番では焦らず取り組めました。

択一式・複数選択について(学習時間帯;通勤時間中、息子昼寝時間、平日早朝早起きして学習)

一年目と大きく考えを変えて取り組みました。一年目は申告書、課税価格の計算問題だけで27点を目指していました。択一、複数選択は絶対に自分には得点できないと思っていましたし、範囲も広いし、何から手を付けていいかもわからない状態でした。それが大きな間違いでした。この科目では「取れるところを確実に取る」が重要です。はじめから捨てる、は通用しません。1点でも2点でも点数を紡いでいく。まさにそのような科目です。自己の意識改革を行い、まずは過去問から取り組みました。覚えるのではなく、何故そのようになるのか、に重点を置き、「この中でA国原産地となる貨物はどれですか」のような与えられた情報を使い、解答していくような問題をマスターすることを心掛けました。ただし、正解の理由が「類注に規定があるため」のようなそもそも知らないと解答できないような問題については間違っても深く考えず、とにかくインプットに徹しました。

(選択式問題を振り返って)

53回本試験でも運よく与えられた条件を使い原産地を特定する問題が出題され、試験中、ニヤリとしたのを覚えています。52回本試験で出題されたものと同じ形式でしたので、得点することが出来ました。合計6/15点(前年0/15点)でしたので、自分の中では及第点でした。原産国特定の問題はこれからも出題されると思います。この問題のポイントは、どういう条件だとA国の原産国になる/ならないということをしっかり理解することです。過去問に出ているものだけを丸暗記していても通用しません。あとは与えられた資料や条件をいつ使うのかを理解することです。資料や条件は、それらがないと原産国が特定できないから与えられているわけです。では何が、どこがネックとなり原産国が特定できないのか、という思考回路で取り組むことが大事です。この文章のここの部分があいまいだから原産国がわからないが、この資料のここの部分を使ってやると、この筋の考え方が消えるから原産国がAと特定できる、のように解答までの道筋を組み立てることに重点を置いてください。

課税価格の計算について(通勤、帰宅時間、息子昼寝時間、就寝後深夜等)

通関実務をクリアするにはここで得点を稼がないと厳しいです。最低8点/10点、10点満点を取れるよう学習しましょう。53回本試験では10/10点(前年6/10点)でした。この分野についても以下の点に関して1年目と意識を変えて取り組みました。

輸入する貨物の基本となる金額

問題文章が長くなると、どれを加算するのかわからなくなります。まずは今回輸入する貨物は単価いくらで何個なのか、を意識しました。個人的にこれを「ベース」と呼び、問題余白にべ(べを〇で囲んだ文字)と書いて500円/個×1,000個=500,000円のように書いていました。ここからスタートするんだ、と自分の中の意識付けのためです

 指示語

「この輸入のうち」、「この4,000個」のように指示語が使われています。指示語はどれを指しているのかを意識して問題を解いていました。

 ・加算・非加算の判断

これが判断できないと話になりません。過去問で基本的なところを習得し、その他は関税協会が出版している関税評価303という書籍で知識を増やしました。この書籍非常にためになり、輸入とはどういったものなのか、課税価格に算入するときの考え方などが肌感覚でわかる書籍でしたので、おすすめの1冊です。

  • 育児と並行しての学習

子供が生まれたら家庭内の空気が育児一色になります。夫(夫の立場ですのでここでは夫とします)の個人的な学習(会社命令と言えども)、なんてものの優先順位は最下位になります。育児をしながら学習をされている方も少なくないと思いますので、まずは以下の通り意識を変えてください。

・ゆっくり机に座って学習は出来ない

通勤時間をいかに効率よく使うかがポイントです

・通勤時間以外の隙間時間を最大限に使う

 会社の昼休み時間は当然、トイレや移動中、会社の卓上カレンダーにこっそり27類の貨物を張っておく等隙間時間を通関士試験一色にすることを意識する

・子供の昼寝の時間を活用

 寝付かせるために自分も横になるなら参考書を携帯しましょう、子供が寝たら慎重にめくってください。

 ちょっとした音でも子供は起きます。何度も痛い思いをしました。そーっとめくりましょう。

・休日なんてものはない

そもそも育児をしていると休日なんてものはありませんね。年がら年中平日です。心休まるときなんてないです。夫で会社勤めの立場の私は平日の方が休日より断然楽でした笑

・時間がない、ではなく作り出しましょう

曜日問わず、朝5時頃起床、6時半まで学習、夜は0時から1時頃まで学習していました。睡魔が半端ないですが、二度とこんな試験受けたくない、という一心でやっていました。育児が伴うと妻も不機嫌になりますし、肩身が狭いので、一刻も早くこの状況を脱出したいという思いでやっていました。

以上となりますが、このような意識と学習で合格することが出来ました。この試験ですが、通関実務をいかにクリアするかがポイントです。何故この貨物がここに分類されるのか、また課税価格に何故この金額が加算されるのか、また加算されないのかなど、小手先の暗記ではなく、ゆっくり考え、理解することが合格に繋がります。

受験生は長い戦いになりますが、頑張ってください。合格後の景色は今までとは全く違いますよ。