2020年東京税関制覇 そして 2021年横浜税関制覇

Bankoo さん(男性 金融機関勤務 2020年度+2021年度合格 受験回数計3回)

私は通関業務とは異業種の金融機関に勤務しています。貿易実務検定A級取得済み、貿易アドバイザー協会会員です。公私共に貿易には関心があります。2019年4月に通関士試験受験決意。主な動機は平成から令和に移行する際に10連休があったので、ボーっと過ごすより少し勉強でもしようかと言う軽い乗りでしたが、考えてみれば10連休ぐらいで身に着く試験ではありませんでした。2019年は実務が1点不足で失敗。翌年2020年は奮起してみこ会に入会して合格出来ました。ここ迄はよくあるパターンでしょうが、合格出来た翌年(2021年)、受験する人達を少しサポートしている中で、その人達に唆されてこれ又、軽い乗りで再々受験することに。1回目の合格は東京税関だったので、せめて2回目は別の税関を制覇しようとすこし遠くなりましたが、横浜税関で受験し無事に合格出来て面目を保てました。

通関士試験は点数が出るわけでもなく、合否しかないのですが、1回目の合格時は内容的には必ずしも自分の想定通りではなかったことも理由の一つでした。。

そんな訳で昨年も合格体験記を投稿させて頂いたのですが、2度目の合格と言うまだ短い歴史ながらも、みこ会史上初と思われる面白い体験ということで、再度、みこさんに光栄にもご依頼頂いたので、その間の体験記として、今後、受験される方の参考になればと寄稿させて頂きました。

3年間で使用した教材等を中心に書かせて頂きます。

1. 1年目(2019年)は上述の通り、10連休もあり異業種ながら貿易に関わる仕事もしていることもあり、貿易関係唯一の国家試験である通関士試験の勉強でもしてみるかとの本当に軽い気持ちで、ネットでやたらと評判が良かったフォーサイトの通信講座を申し込みしました。

 このフォーサイトの教材中心でも合格出来た方は少なくはないようですが、一番評価が割れるのはこのフォーサイトではないでしょうか。この教材の特徴はコンセプトでも明快に謳っていますが、通関試験は6割取れば良いのだと、良くも悪くも完全に割り切っています。その為、テキストはコンパクトに纏まっており、カラーで見やすいのですが、法律系の試験を学ぶには、何故こういう決まりがあるのかと言う、立法趣旨を理解しないと応用が利かなくなります。その点、フォーサイトのテキストはコンパクトにしようとの方針からでしょうが、立法趣旨の説明が決定的に不足しているなと感じました。理屈なんていいから、とにかく最低限の知識で合格したいと言う方には良いかもしれません。もっともこれは通関業法と関税法等に限ったことで、通関実務はこのフォーサイトの教材だけでは絶対に足りないと断言しても良いと思います。申告書問題は過去問輸出入申告で各5問ずつ(これは日本関税協会の無料サイトでも見られるような内容)、直前対策講座として同様に輸出入申告書問題各5問ずつ、そして貨物分類に関してはほぼ触れていません(通関実務の問題集の後半に少しだけ記載あるも、講義では説明なし)。フォーサイトに良い評価をされてる方も通関実務は別途、対策をされた方が多いようです。

結果、1年目(2019年)はフォーサイトのコンセプトの通り、通関業法と関税法はぎりぎり基準クリア、実務は1点不足でした。敗因は実務でケアレスミスをしたことであり、勿論、不合格は自身の努力不足の結果ですが、最初から6割取れば良い試験だからと割り切ってしまう戦略は非常に危険だなと実感しました。

2. 2年目(2020年)は知り合いの方から教えて頂いた、みこ会にまず入会しました。これは正解でした。誰でも見られるみこさんの無料サイトでも有益な情報がたくさんありますが、会員になると、会員限定の記事を読むことが出来ます。科目やテーマ毎の勉強の仕方、馴染みが薄い法律条文の読み方、多くの受験生が疑問に思うテーマ等通関士試験を知り尽くしたみこさんならではの記事は自信をもってお勧めします。特に独学の方に心強いのは、テキストを見ても、理解できないことが出てきた際、みこさんに質問すると懇切丁寧に回答してくれます。ご自身の状況を説明すると、それに合わせた勉強の仕方もアドバイス頂けます。但し、これまで多くの受験生からの質問を受けておられるみこさんなので、ご自身の疑問点が記事に掲載されているかもしれません。まず、みこさんの記事に掲載されていないか確認し、調べればわかるようなことはご自身で調べ、それでもわからなければ、質問するようにして下さい。

 その他2年目に使用した教材や勉強方法等は昨年(2020年)も別のペンネーム(なーちゃん)で投稿してますので、ご関心がありましたら、合わせてご参照下さい。(こちら

3. 3年目(2021年)は再度、みこ会に入会致しました。一度、合格したにもかかわらず、みこ会に入会した動機は周りの何かしら貿易業務に関わっている人達に通関士試験を勧めてみたいと思っていたので、情報収集が主な目的でした。まさか最初は合格した翌年に再度、自身も受験するなんて考えてもいませんでした。

せっかく取得した資格なので、異業種の今の業務に間接的にも活かせないかと考え、2021年になったら前年学んだことを振り返ろうと思い、2021年版通関士試験合格ハンドブックを購入しました。この時は試験を受けるつもりはなかったので、暇な時に流し読みしていた程度です。因みに前年は翔泳社の通関士完全攻略ガイドをメインテキストにしてました。特に独学の方が使用されているメインテキストの両雄の合格ハンドブックと攻略ガイドですが、両方見た者としての感想は甲乙つけ難いですね。合格ハンドブックの方がより試験対策に特化して無駄なくポイントを纏めているようです。かと言って、フォーサイトのテキストのように、6割取れば良いのだからと必要最低限だけというものでもありません。攻略ガイドの方はより何故この規則があるのかと言う立法趣旨の説明は詳しいと思います。従って、攻略ガイドの方が文字も小さく、ページ数も多いです(合格ハンドブックは前年のマウンハーフジャパンの模試が付いています)。

そして、2021年7月後半になってその年受験予定の仲間に唆されて、自身も受験する羽目になりましたが、受験するからには一度合格した身として合格出来なければ格好悪いので真剣に見直しました。コロナ感染者が激増していた時期ですが、仕事は全く通常通り毎日出勤しましたので、平日、勉強出来るのは通勤時間だけ、その代わり8月下旬に取得した年に一回の連続休暇(土日入れて9連休)ではとても旅行に行ける状況ではなく、この間の9日間は毎日15時間位掛けて見直しをしました。

本格的に勉強できたのはこの9日間と土日だけでしたが、前年の勉強時に1年目の反省から、立法趣旨をある程度理解しながらやっていたので、見直し時は割とすんなり記憶が戻ってきました。但し、何から何年とかの数字は忘れているものも多く、しっかり覚え直しました。

ご参考迄に合格ハンドブックの他に私が3年目に使用した主な教材等は以下の通りです(基本的には一度合格しているので、お金を掛けないように前年の教材を再活用しました)。

1 みこ会の課税価格決定のテキスト⇒前年はまだなかったもので、みこさんの力作のこれを見てみたかったのも再入会の動機の一つでしたが、事前にコピーしてあったので連続休暇中に熟読しました。課税価格だけをテーマに原則編と例外編を合わせて400ページ近くあり、これは圧巻でした。前年合格していたのに、結構、わかっていないことや誤解していたことも多く、とても役立ちました。絶対にお勧めです。

2 前年(2020年)受講したLECの通関実務対策講座 貨物分類編⇒前年の合格体験記でも記載しましたが、特に独学の方にはこちらもお勧めです。貨物分類を全て覚えることは到底不可能ですが、この講座では貨物分類の基本的な考え方を教えてくれます。音声だけはダウンロード出来るので、合格後も何度か聞いていましたが、再受験を決めた際に、改めて聞き直しました。とにかく担当講師の伊藤先生の解説はとてもわかりやすいです。2021年本試験の輸入申告書の問題は貨物分類をしっかりやっていた方は多分、楽に分類出来たはずです(例えば、ココアを含んでもアイスクリームは第21類、アルコール分0.5以下のビールはノンアルコールビール等は貨物分類知識の定番で、この講座でもしっかり説明されていました)。

その他、貨物分類の知識を問う単独の問題もいずれもこの講座を受講していたお陰で全て正解出来ました。

3 上記同様、前年受講したLECの通関実務対策講座 貨物分類編⇒こちらも前年、音声ダウンロードしていたので、復習に活用しました。貨物分類編同様、伊藤先生が分類するこつを分かり易く解説してくれます。

4 受験初年度に購入した2019年ゼロからの申告書⇒申告書の問題集の定番なので、全問1回だけ復習しました。最近の本試験の申告書問題の傾向からすると、特に後半は難し過ぎる気がします。特に最初の内は出来なくても気にしないで下さい。

5 前年(2020年)使用した2020年版通関士過去問集⇒2年目の時は何度も繰り返しましたが、3年目の際は通勤時のみ読みこんでいました。全ての試験範囲を網羅しており、解説も分かり易いです。メインテキストとして出版社が違う合格ハンドブック等他のテキストを使用している方が問題集はこちらにしても違和感ないと思います。

6 受験初年度に購入した、日本関税協会の計算問題ドリル2019⇒計算問題対策では定番のテキスト。2年目は繰り返しやりましたが、3年目は前年迄使用した際に、付箋を付けておいた間違えた箇所を中心にやりました。尚、2020年、2021年と続けて消費税も求める問題が出ました。今後、定着するかもしれませんので、しっかり慣れておいた方が良いでしょう。みこ会の記事で詳しく説明されており、その通りやれば、時間が掛かりますが難しくはありません。

7 受験初年度に購入した、どこでもできる通関士2019・2020年版⇒語群選択対策用ですが、関税法等や通関業法の知識の整理の為にも有効です。軽いので通勤時や昼休みなど隙間時間に気軽に読めます。

8 TAC法令改正点講義⇒なるべくお金を掛けない方針でしたが、基本的に前年のテキストを再利用していたこと、法令改正は素人がフォローするのは難しく、コロナ対策もあり結構法令改正があると聞いていたので、料金もお安い為、急遽、受講しました。結果、2021年の試験では法令改正事項が何問か出題されましたか、この講座のお陰で法令改正箇所は全問正解出来ました。但し、みこ会でもしっかり法令改正事項はフォローしてくれます。

9 模試⇒3年目も受験するからには合格したかったので、みこ会とのタイアップで割引受験出来たLECと通関士模試の定番の日本関税協会を申し込みしました。その他、2019年に受験した日本関税協会、マウンハーフジャパン、2020年に受験した日本関税協会、LEC、TACの模試も保管していたので、時間を図って全てやりました。間違えた箇所は解説を見て復習しました。

4. 最後にこれから通関士試験を受験される方へ。

1 フォーサイトの講座のように効率化を追求される余り修得に時間が掛かる貨物分類に関して、ほとんど触れていない講座もありますが、これは危険ですし、合格後、通関業者に勤務されないとしても、今後、利用が増えてくると思われる経済連携協定等を理解するにおいて、貨物分類の知識は役に立つはずです。早めにしっかり準備した方が良いと思います。但し、貨物分類知識がなくても申告書問題で時間を掛ければ解答は出来なくはありませんので、勉強時間が取れない方はお勧めしませんが、思い切って貨物分類を勉強しない選択肢もありかもしれません。

2 上記の貨物分類にも関係しますが、貨物分類のベースになるHSコードが2022年に改定されます。多分、TACやLECのように貨物分類に力を入れている資格の学校等でも配布されるテキストには改正点の全ては反映されていないと思われます。TACのような通学式の学校でしたら、別途、改正点をフォローしてくれると思いますが、2022年の試験はHSコード改定に伴う問題が出題されるかもしれません(例えば、自動車用の窓は第70類のガラス及びその製品から2022年以降は第87類の鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品及び付属品に変更されます)。例年以上に法令改正事項には留意下さい。

3 通関士試験の合格率は15%前後、つまり100人中、80人以上が不合格になる試験と、一見すごく難しく思われますが、3回受験して感じたのは、毎回、試験開始後30分したら、退出してしまう方が少なからずいました。その内大半の方は出来たからではなく、理由はわかりませんが(会社から強制されて仕方なく受験、今回は次回に向けてのお試し受験等)、そもそも合格は最初から諦めている方と思われます。ですから、合格目指して真剣に頑張った方の合格率はもっと高いはずです。努力すれば報われる試験ですので、是非、頑張って下さい。そして、日本の貿易の発展の為にも益々ご尽力下さい。

長々と失礼しました。