合格に実務経験は有利?未経験者でも受かるの?

通関士試験は、受験資格に制限がなく誰でも受けられる試験です。

そのため、理屈の上では、通関業での実務経験が全くなくても合格することはできます。

では、実務経験は合格に有利に働くのでしょうか。また、実務未経験者でも合格できるのでしょうか。

 

 

実務経験は有利なのか?

まず、結論からいいますと、有利な傾向はやはりあります。

試験と実務はポイントが異なるので、実務経験者がほとんど勉強せずすんなり試験に受かるということはありませんが、それでも未経験者よりは有利でしょう。

私のところには多くの受験生の情報が集まりますし、みこ会(こちら)の会員様にも実務経験者と未経験者のどちらもたくさんいらっしゃいます。

そして、全体として見たときに、経験者の方が飲み込みが早い傾向があります。

試験科目である通関業法と関税法等の二科目については、経験の有無はそこまで関係がありません。実務でもさほどきっちり詰めて覚える機会の無いところが多かったり、理解自体はそこまで難しくないところがほとんどだったりするからです。

しかし、通関実務という科目の中核部分である申告書と呼ばれる部分と、それを解くために必要な知識である課税価格の決定と呼ばれる部分について、差が出る傾向が見られます。

とはいえ、あくまで全体としてみたときの傾向であり、個人に着目してみると、経験者の中でも飲み込みの早さにかなり差があります。

まず、日本語読解が苦手とみられる方は、飲み込みが遅いです。

問題や与えられた資料を正確に速く読み込めないからです。

それから、今述べた日本語読解のお話とも関連しますが、仕事で法令通達を読む力を身につけていない方も、あまり早くはありません。

仕事でやっていたのにそんなことがあるのかと思うかもしれませんが、結構いらっしゃいます。申告書の分類は、本来、自分で統計品目表と呼ばれるものを中心とした法令通達を読み解いて行わなければならないのですが、慣れでやっていたり、上司に教わったまま自分の頭で考えずにやっていたりする方は、読む力に乏しいです。もちろん、完璧に近いくらい自力で読み解ける方は三科目試験の通関士試験レベルではほとんどいませんが(そのレベルだととっくの昔に受かったベテランの方か、専門的な法律知識がある方くらいになってくるからです。)、ある程度まともな力ですら持たない実務経験者の方も結構います。

そして、一番まずいのが、試験問題の指示に従わず、自分の実務経験に無理矢理引っ掛けて考えるクセがある方です。

実務で経験したものに似た事例が出題されると、そのときの方法で処理してしまい、問題文の指示に反している、ということもよくあります。そうすると、実務で経験したこととの整合性を考え出したり、他の事例の場合はどう処理すればよいのかを考え出したりして、混乱して試験から離れていってしまうのです。試験で聞かれているのは、自分が実務で経験した処理方法ではなく、問題文の指示に従って自分の頭で考えることだと理解する必要があります。実務経験にこじらせたプライドを持ってしまっている方は、まずそれを捨ててしまいましょう。試験と実務は違うので、そういうことは合格してから考えればよい話です。別に、あなたの実務経験が否定されている訳では全くありません。単にフィールドが異なるだけです。

 

 

未経験者でも合格できる?

以上に述べたお話のように、全体として見たときに実務経験者が有利な傾向はあります。そして、実務経験者の割合も多い試験ですから、相対的に見れば未経験者は不利ということになります。なぜなら、形式的には、合格ラインが得点割合で決まる絶対評価の試験ですが、実質的には、合格人数がある程度に収まるように調整して作られている相対評価の試験に近いものがあるからです。

とはいえ、合格のためにしなければならないことが膨大な試験という訳ではないので、試験に限って言えば、経験の差を埋められるくらいの勉強量は数ヶ月程度で積むことはできます。

実際に未経験から合格された方も多い試験ですので、受けると決めたのであれば、怯まずにしっかり勉強して挑戦してみましょう。