最後まで諦めないで

アオミ さん(女性 2020年度合格 受験回数1回)

【はじめに】
 私が、今回通関士試験を受けようと思った1番の理由は「自分の可能性を広げたい」からでした。
学生時代から取得したいとは思っていましたが、一筋縄ではいかない試験のため、自分の中で覚悟が足りず、ずっと挑戦することが出来ませんでした。
しかし、諦めたくない!自分に自信をつけたい!と思い、2月から勉強を開始しました。
「初学、独学、実務経験無し」で合格出来た私の経験が、これから受験をされる方の少しでも参考になれば嬉しいです。

【勉強時間】
約8か月で450時間。

【使用教材】
・ヒューマンアカデミー「通関士完全攻略ガイド2020」  
 最初、このテキストを見たときは分厚さに怯みましたが、その分沢山の情報が詰まっており、初見の人でも大変分かりやすいと思います。不明点があっても注釈があったりワンポイントで分かりやすく書いてあり、勉強の流れも殆ど止まることがなくスムーズに進みました。
私はよく出る箇所やメモをテキストに書き込んで、この一冊で事足りるようにして、いつも持ち運んでいました。

・ヒューマンアカデミー「通関士過去問題集2020」
 テキストと並行して使用しておりました。こちらも分厚いですが、テーマごとに分けられており、過去の問題からよく出る問題を抜粋している為、取り組みやすくこの一冊を網羅すれば試験対策(特に通関業法と関税法)は十分だと思います。
問題を解いて、該当する箇所をすぐ参考書で復習し、アウトプットとインプットを交互に繰り返して勉強しました。

・ヒューマンアカデミー「通関実務集中対策問題集第3版」
 上記二冊と同じシリーズで、難関の実務問題に特化した問題集です。本試験問題よりも難しく作られている気がします。
ただ、初学で実務経験もなく、数学や英語が苦手なわたしは最初からこれを解くと理解が出来ず一時期離れてしまいました。その為、別の問題集で申告書をある程度理解して慣れてから取り組むようにしました。
試験前は実力も付いてきていたので、この問題集ばかり何度も解き、色々なパターンの問題に対応出来るよう勉強しました。

・日本関税協会「ゼロからの申告書2020」
 こちらも実務問題の申告書に特化した問題集です。解き方も丁寧に説明されており、初学で実務経験もなく何も知らない私でもこちらは本当に分かりやすく取り掛かり易かったです。
輸出入合わせて30問あるので、色々なパターンの問題を解く事が出来ます。基礎編から応用編まで掲載されており、特に10問目以降は難しい問題が多いので、やりがいがあります。
試験前はこの問題集の10問目以降と、ヒューマンアカデミーの実務問題集を繰り返し解くようにしていました。

・日本関税協会「計算問題ドリル」
 こちらは通関実務で出題される計算問題に特化した問題集です。計算問題は5問10点ですが、満点を目指して取り組む必要があります。計算問題はしっかりと対策すれば満点は狙えると思います。
そのため、私はこの問題集を6月頃から開始し、苦手な箇所を中心に4周はしました。税額の計算と課税価格の決定の2つに分かれており、簡単な問題から難しい問題まで150問近くあるので、この1冊だけで実務の計算問題の対策は十分だと思います。

・過去問
 過去問は10年分を解いている方が多い印象です。そして余裕があれば解いた方がいいと思います。法改正があるため、サイトで法改正の部分を調べてから解く、という方法がベストかと思います。
私の場合、時間と頭の容量がギリギリでしたので、過去問は5年分に絞り、何度も繰り返し解きました。通関業法は2017年に大きく法改正があったので、過去3年分のみ解きました。
試験前は過去問に取り組んだ回数が少ないことが、自分の中で不安要素の1つとなったので、出来るだけ早くそして多く過去問を解く事をお勧めします。

・みこ会
 独学初学で2月から勉強をしていましたが、6月頃から通関実務、特に選択問題に不安を感じました。
参考書に掲載されているだけでは不十分で、理解も出来ず悩んでいたところ、以前から存じ上げていた「みこ会」に入会してみました。会費も安く、管理人のみこ様が多くの解説や参考になる記事を掲載されておられて、本当に助かりました。過去問や市販の問題集の解説も本当に丁寧に解説されていて、不明点は必ずと言っていいほどみこ会の記事には掲載されていました。何度読んでも覚えられなかった実務問題の事前教示は、みこ会記事のおかげで覚えることが出来ました。
また、受験生を何人も見てこられているからこそ、受験生への応援メッセージは本当に想いが込められており、いつも読んで励まされておりました。
独学なのでネットで調べるにも限界があり、でもお金もそんなにかけられないから通学や通信教育は出来ない…という私には本当に有難い存在でした。

【勉強場所】
 2~7月はカフェや公立図書館などで、土日は朝から夜まで勉強していました。しかしコロナで緊急事態宣言となり、閉鎖するところが増えてしまった為、早めに会社に出勤し勉強するなどして、勉強場所は必ず確保出来るようにしました。
 8〜9月はラストスパートということで有料自習室に登録して、平日仕事終わりや土日も朝から晩までこもって勉強しました。

【勉強内容】
・2~5月(平日1~2時間/休日2~4時間)
 まずは覚えるというより、知ることから始めました。本当に無知の状態でのスタートですので、1ページめくるたびに知らない用語が出てきて、その都度ネットで調べ、また読んでは調べる、の繰り返しでした。本当にスローペースでしたが、知らないことを知れる喜びもあり、毎日読書感覚で楽しく読み進めていました。
2月下旬から、分からないなりに問題集に取り組み、そのたびに参考書で確認する作業を繰り返しました。
途中何度も嫌になるぐらい時間もかかりましたが、読む→解く→読むの繰り返しで頭に叩き込んでいきました。問題を解いた箇所は参考書で調べてメモを残し、後から見てもどこが出やすい箇所か参考書に書き込んで分かるようにしてました。
振り返ってみると、この時期に丁寧に覚えたおかげで、後々の振り返りが楽だったような気がします。よく出る箇所も参考書を見れば一目瞭然でしたので、そこを重点的に覚えていくことができました。

・6~7月(平日2~3時間/休日3~5時間)
 この2ヶ月は仕事の異動も重なり忙しく、勉強への意欲が削がれスランプに陥りました。
難関と言われる通関実務の申告書に取り掛かり始めましたが、全く分からず1つも解けませんでした。そして解けないことがストレスとなり、体調も崩し、次第に実務問題から離れてしまいました。
しかし1歩でも前に進まないと合格に絶対近づかない!ということで、自分を奮い立たせて、暗記だけでも!と関税法ばかりに力を注いでいました。結果、実務の勉強時間は当初の計画よりもだいぶ少なかったですが、関税法の強化は出来ました。
この2ヶ月の影響で、後々自分の首を絞める事になったので、通関実務は早めに取り組み、分からなくても諦めず戦うことが大切だと思います。

・8月(平日3時間/休日4~6時間)
 やっとスランプから抜け出し、毎日関税法と実務を交互に取り組んでいました。しかし実力がついておらず、日本関税協会の模試ではE判定(通関業法7割、関税法5割、実務4割)でした。
悲惨な結果でしたが、自分の中で苦手意識が薄くなり解き方のコツも掴み始めていたので、逆にやる気に変わりました。模試を受けていないとラストスパートも走り出せなかったと思います。模試で間違えたところを中心に、ひたすら復習と申告書を解く毎日でした。
 平日も仕事終わりに有料自習室に通うようになり、勉強時間もだいぶ確保出来ました。

・9月(平日4時間/休日7〜8時間)
 8月末の日本関税協会の模試を復習し、申告書問題も解くのが楽しくなっていたので、9月のLEC模試は、少しの自信と期待を抱きながら受けました。結果、予想以上に解けず最低点を叩き出しました。(通関業法5割、関税法5割、通関実務3割)
特に実務の結果は絶望しました。またコマが振り出しに戻り、むしろ何も進んでいなかったのではないか、と嘆きました。本試験まで残り1ヶ月を切っていたので、ここで初めて今年は受験を見送ろうかとさえ考えました。
しかし、2月からここまで必死にしがみついてきた自分自身に、そんな愚行は今更出来ず気持ちを必死に切り替えました。そして「模試は模試。むしろ本番までにできれば大丈夫」と思い、再度自分を奮い立たせました。
 そこから残り3週間は、ひたすら模試の復習と何度も間違えるところを覚え、申告書問題もページがボロボロになるほど取り組みました。平日仕事終わりに自習室に行き、土日もずっと朝から晩まで自習室で勉強していました。
過去問は5年分解いたのですが、試験1週間前にやっと3科目全て7割超えてきた、というギリギリの状態でした。
 結局、本試験まで1度も「この実力なら安心できる」と自分に自信はもてませんでしたが、心の底から充実して楽しかった8か月なので、全部出し切るぞ!という前向きな気持ちで当日挑むことが出来ました。

【試験当日のこと〜執念のラスト5分間〜】
 試験時間の1時間前には受験会場に到着して、心を落ち着かせていました。試験が開始し1科目目は順調でしたが、問題は2科目、3科目目でした。
私自身のコンディションが悪く普段ならすぐ解ける問題も全く頭に入ってこず、関税法はいつもよりも倍以上時間がかかってしまいました。
結局全部解き終えたのが、試験終了10分前。
時間も残されていないので、不安問題だけ抜粋して見直そうと思いました。しかし、「最後まで諦めないと自分に誓ったのに、ここで妥協していいの…?」ともう一度自分を励まし、時間もない中急いで見直しをしたところ、とある問題で解答の間違いに気付きました。
しかし、その時点で終了5分前のアナウンスがあったのでパニックになっていました。もし書き直した方が不正解だったらどうしよう…と不安がよぎりましたが、どう考えても最初の解答は違うと思ったので急いでマークシートを書き直しました。試験終了2分前の出来事でした。

 そして3科目目の通関実務。今まで通り3問目の選択問題から解きました。途中見たことない問題もありましたが慌てず、選択問題を解き終え、最後に最難関である申告書問題に取り掛かりました。
全部を解き終え、自信のない問題を重点的に見直し、全体の見直しも終えました。
しかし終了5分前。見直しも終えて安堵した気持ちの時に、ふと再度申告書問題を見たら、解答が違うことに気付きました。この時終了5分前でした。関税法同様パニックになり、該当する箇所の問題を読んで、そこから急いでマークシートを書き直したところで試験終了のアナウンスが流れました。
まさか2科目とも、終了間際まで焦る事になるとは予想もしておらず試験が終わっても席で茫然としていました。関税法と実務は全く自信がなく、涙を堪え悲しみに明け暮れながら帰路につきました。

 数日後自己採点をしたところ、通関業法は8割で関税法と通関実務はジャスト6割でした。
そして関税法と実務は、試験終了5分前にそれぞれ書き直したところが○でした。
もし見直しをせずに終了していたら…間違いに気付かなかったら…わたしはそれぞれ「1点」足りず不合格となっていました。
これは本当に執念で勝ち取った1点でした。試験が終わる最後の1秒まで、絶対に諦めない気持ちが合格に繋がったのだと思います。

【良かった点】
 ①参考書1周目で、時間はかかりましたがその分じっくりと読んだので、2周目以降はよく出る箇所を中心にサクサクと読み進められた気がします。
また、最初から1テーマごとにインプット⇨アウトプットを繰り返し、参考書には問題集のページを書いたので、一目でどこの箇所が良く問題に出るかなど分かり、2周目以降時間の削減にもなりました。
 ②暗記科目(関税法、通関業法)は通勤や会社の昼休みなど、隙間時間を有効活用し勉強しました。
よく間違える点は、カメラでページを撮影していつでも見られるようにしていたので、お風呂やトイレなど携帯を見る時間があれば勉強するようにしました。
 ③SNSをフル活用して、色々な方の勉強方法を真似て、自分に合った勉強法を見つけました。特に申告書問題は色々な解き方がありますし、自分が一番解きやすいやり方を早めに見つけることが大事だと思います。
 ④公共の図書館・自習室が通える範囲にあったため、家以外での勉強場所も確保出来ました。
 ⑤気持ちの面で、どんな時でも前向きに諦めない思考で自分自身を鼓舞していました。

【反省点】
 ①過去問を10年分は解いた方が良かったと思っています。私自身余裕が無くて解けませんでしたが、それが不安要素の1つになってしまいました。
 ②多くの方が口をそろえて仰っていますが、出来るだけ早めに通関実務問題に取り組むべきです。
私は6月からでしたが、もうあと1ヶ月は早かったほうが後々楽だなと思いましたし、暗記科目と並行して実務には取り組むべきです。個人的に申告書だけでなく、実務の選択問題も全然解けず時間がかかったので、その点も含めて早めに取り掛かることをお勧めします。
私の様に初学独学で勉強される予定の方は特に時間がかかってしまうと思いますので、本当に早く実務問題に取り掛かって、まずは慣れるところから始めてみてください。

【さいごに】
 受験する覚悟を決めてからは、絶対に受かってやる!とずっと思っていました。そしてポジティブなことを口に出したりSNSに書くように意識しました。
コロナ禍で仕事もプライベートもバタバタでしたが、自粛ムードが逆に勉強しやすい環境を作り出せたかな、とも思います。勉強を始めた当初は、周りから「どうせ長くは続かないだろう」「難しいから無理だろう」「10月まで長いよ」とネガティブな意見が多く、孤独を感じていました。
そこでSNSを活用し、同じ目標に向かっている方々と意見交換をしながら切磋琢磨するようにしました。本当に毎日、たくさんのパワーを皆様から頂くことが出来ました。
 通関士は一筋縄ではいかない試験です。しかしコツを掴み効率的に勉強することで、誰でも受かることが出来る試験だと思います。そして「なぜ通関士資格を取得したいのか、どのように勉強を進めるか」など常に自分と向き合っていくことも大切だと思います。
 私はこの勉強を通して自分に自信がつき、やりたいことが増えました。勉強して何かを学ぶことが大好きになりました。ずっと自信がなく自ら閉ざしていた道が、今回通関士を取得できた事で開けたように感じています。

 通関士試験を通して、皆様の人生がもっと輝けますように。そして自信を持って受験し、合格しますように。
心から応援しております!!
お互い目標に向かって頑張っていきましょう!!